セキュリティ特集

GIGAスクール構想や校務DXの進展により、教育現場ではクラウド活用が急速に広がっています。
その結果、重要情報をクラウド上で扱う機会も増え、事故や攻撃が発生した際の影響範囲も広がりやすくなっています。
文部科学省『教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン(令和7年3月)』では、情報セキュリティ対策について、未然防止だけでなく、インシデント発生時の拡大防止・迅速な復旧・再発防止まで見据えた体制整備の必要性が示されています。(第1編 第2章)

本記事では、こうした考え方を踏まえながら、教育機関におけるセキュリティ対策の難しさと、その中で注目される EDR と SOC の役割について整理します。

教育機関におけるセキュリティ対策の難しさ

教育機関では、次のような特性を踏まえた対策が必要です。

  • 教職員に加え、児童生徒・保護者など利用者が多様であること

→ 適切なアクセス権限設計と利用者への指導が必要

  • 健康・成績・指導・進路など、重要度の高い情報を扱うこと

→ 学習データも評価により「重要情報」に変わり得る

  • クラウド利用(インターネット前提)により、認証・権限管理が重要になること

→ 認証情報漏えいや権限設定ミスが不正アクセスにつながるおそれ

 利用者の多様さや扱う情報の重要性、クラウド活用の進展といった要素が複雑に組み合わさることが難しさの背景にあります。

クラウド時代の鍵になる「端末の安全性」を実現する”EDR”

ガイドラインでは、重要情報を扱うために「強固なアクセス制御」および「端末の安全性」が求められています。

近年は、パターンファイルによる従来型の不正プログラム対策ソフトウェアでは対応しきれない攻撃が増えており、ふるまい検知(不審な挙動の検知)の重要性が高まっています。

こうした背景の中で、マルウェア攻撃を検知した際の対応として、有効な対策の一つが" EDR(Endpoint Detection and Response)"です。

EDRは、端末上の挙動(プロセス・通信・ファイル操作など)を可視化し、不審な挙動を検知して迅速な対応につなげる仕組みです。
端末レベルで異常に気づくための「センサー」のようなイメージです。

 

教育現場におけるEDRの価値

  • 未知・巧妙化した攻撃の兆候を捉えやすくなること
  • マルウェアが侵入した際に、不審な挙動を検知して早期に警告できること
  • インシデント発生時に、どの端末で何が起きたのかを把握するための手がかりになること

教育現場では、特に校務端末や外部接続のある端末など、重要情報にアクセスする領域から段階的に見守りを強化していく考え方が現実的です。

セキュリティシステムの司令塔として、運用体制を支える”SOC”

ガイドラインでは、インシデント発生時の拡大防止や迅速な復旧に向けて、責任者・連絡体制を含む運用体制の整備が求められています。

また、EDRなどで取得される各種ログは、インシデントの検知や原因解明のための手がかりになりますが、取得・保管するだけではなく「見る・判断する・対応につなげる」ことで初めて価値を発揮します。

こうした運用を実現する考え方の一つが、"SOC(Security Operation Center)"です。

SOCは、EDRを含む各種セキュリティログを横断的に監視・分析し、異常や攻撃の兆候を把握しながら、優先度判断や初動対応の支援を行う体制です。
組織として対応を継続的に実行することを支える「セキュリティシステムの司令塔」のようなイメージです。

 

教育現場におけるSOCの価値

  • 人による継続的な監視・分析を通じて、組織として不審な挙動を早期に把握できること
  • インシデント発生時に、教育委員会や学校の判断・初動対応を支えること
  • 被害の拡大防止や復旧、再発防止に向けた対応を継続的に支えられること

教育現場では、すべてのログを各学校で継続的に監視・判断することが難しい場合も多く、こうした運用を外部組織との連携を含めて整えることも、有効な選択肢の一つです。

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教育委員会・学校が押さえたい「対策整備の順番」

教育機関におけるセキュリティ対策は、守るべき情報と運用体制から考えることが重要です。

Step 1:重要情報の棚卸し

まずは「何を守るか」を整理します。
扱う情報を重要性ごとに分類し、誰がアクセスするのか (教職員/児童生徒/保護者/委託先等)を明確にします。

Step 2:強固なアクセス制御

重要情報をクラウドで扱う場合は、多要素認証(MFA)などを含む 強固なアクセス制御が基本になります。

Step 3:端末の安全性を可視化

EDRなどを活用し、端末側で不審な挙動を把握できる状態を整えます。
これは攻撃の兆候を早期に捉えるための土台になります。

Step 4:運用体制の確立

ログの取得・保管に加えて、それらを確認し、対応の優先度を判断して 必要な初動につなげる運用体制とSOCまで整えることが重要です。

まとめ

教育分野では情報の取り扱いにおいて、

  • 守るべき情報が多い
  • 利用者が多様である
  • 継続が求められる業務が多い

といった特性があるため、セキュリティ技術を導入するだけでなく、運用体制まで含めて整えることが重要なポイントです。

 

役割の整理

  • EDR:端末の挙動を捉え、不審な挙動に気づくための「センサー」

  • SOC:ログを見て判断し、初動対応につなげる「セキュリティシステムの司令塔」

強固なアクセス制御を土台に、EDRで兆候を捉えSOCで判断と初動につなげる。

この組み合わせが、教育委員会や学校の「学びと校務を止めない」体制づくりを支える有効な考え方の一つといえます。

教育の「安全管理」に、こうしたサイバーセキュリティ対策を組み込んでいくことが、GIGAスクール・校務DX時代の教育現場に求められています。

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