プロジェクトの流れSMART CITY PROJECT
スマートシティプロジェクトを題材に、
両備システムズの仕事の基本的な流れを紹介します
2017年入社
SE
E.I.
2010年入社
SE
M.F.
「2016ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに「保育園落ちたの私だ」がランクイン。2017年には、地元岡山市の待機児童の数が日本ワースト2位に。日本が抱える「少子化」、「女性の活躍」という社会的課題を解決するために欠かせない「保育園」。
地元岡山はもちろん、日本に根付く、「保育園」という巨大な問題への一手となり得るソリューション「HOICT」が、両備システムズにはあるのだ。
「HOICT」は、その名の通り、公立「保育園」業務を「ICT」の力で支援するシステム。このプロジェクトの始まりは、まさに待機児童問題の渦中、2017年に遡る。
すでに蓄積していた保育園向けシステムのノウハウに、両備システムズが持つ公共系の営業チャネル、自治体間専用の「LGWAN(総合行政ネットワーク)」に関する国内オンリーワンのノウハウ、このLGWANへの接続が認可されている自社データセンターという、3つのコアコンピタンスをかけ合わせるという強力な布陣。
とはいえ、「一筋縄ではいかなかった」と、「HOICT」黎明期から開発に携わってきた M.F. は、「まず、私立と違い、公立保育園は、自治体の下に複数の園が紐付く組織構造のため、それを踏まえた管理方法が必要でした」と語る。
そして、最大の問題が、指導計画や日誌をはじめとした帳票の数の多さ。さらに、それが自治体ごと、園ごとに異なり、統一された雛形がないのです。それらをシステムに実装するにあたり、ある程度標準化しなければいけないわけですが、それが難航しました。
そこでプロジェクトチームは、ウォーターフォール(※1)ではなく、アジャイル(※2)での開発を採用し、最初の顧客となった自治体で使っているものをベースに、導入自治体が増えるたび新たな帳票を追加していき、柔軟な対応を図る。
※1 ウォーターフォール: 滝が上から下へと流れ落ちるように、時間軸に沿って「要求」→「設計」→「実装」→「テスト」といったような後戻りしない工程に分割し、段階的かつ着実に品質を確認しながら完成させる手法
※2 アジャイル: 「要求は変化するものであらかじめ決定できない」という前提で、開発工程を1週間から数週間単位で区切り、優先度が高い順に実際に動くソフトウェアを実装し、反復的に完成させる手法
それでも対応が全然追いつかず、結局これが最大の難所となりました。ただこの苦難が後に、「HOICT」の目玉である「フリー帳票」機能につながっていくのです。
2018年にリリースしたβ版を稼働させながら、2019年には刷新。それでも、当時保育園のICT化を行っている自治体が少ない中で、「HOICT」は着実に効果を上げていった。
登降の打刻管理が紙ベースだったり、延長保育料が手計算だったり、それによる人的エラーが引き起こしていたミスが目に見えて減り、帳票のペーパーレス化や情報のシームレス化で、業務効率が格段に向上しました。自治体の担当者の役に立てたこと、そして、保育士さんの負担を少なからず低減できたことが嬉しかったですね。だからこそ、「もっとより良いものを作らなくては」と意を新たにしたものです。
2020年になり、これまで販売管理システムの開発や、金融系企業の支援に携わってきた当時入社3年目のE.I.がチームにジョイン。主に、自治体の基幹システムとのデータ連携機能の仕様決めを担当することになった。
この機能は、開発の山場となる機能でした。技術面ではWebアプリケーションやパッケージ開発に関する知見と経験が不足していたこと、業務面では保育園業務の勘所がつかめていなかったことから、非常に苦戦したことを覚えています。データのパターン考慮漏れや、意図せぬエラーなど、解消しなければならない問題が山積み。
それを少しずつ少しずつ崩していき、なんとかテストをクリアできたと思いきや、運用が始まると予想外のデータが流れてきて、また社内外を奔走する。そんな毎日でしたね。
さらに「HOICT」では、各導入自治体特有のカスタマイズ内容をも標準機能として追加し、製品として強化していく方式を採用していたため、E.I.は「HOICT」導入担当として、自ら製品を担ぎ、自治体へ赴いていくことになる。
初めて担当することになった自治体の方が、システム全般に詳しかったこともあって、導入経験の浅い私はたじたじになったことを覚えています。鋭い質問に窮してしまったり、難解な問い合わせに頭を抱えたりはしょっちゅう。さらには、そこでの本番稼働後、3カ月連続で認識の齟齬を発生させてお叱りをいただいたことも。
原因はさまざまでも、会社の顔として対峙するのは他でもない私。そんな責任感と覚悟で乗り切り、最終的に無事安定稼働させることができました。
そんなE.I.の奮闘は思わぬかたちで報われることになった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染拡大に伴い、保育園においても登園自粛や緊急閉園などの対応が余儀なくされた。そんな中、「HOICT」によってICT化された園からは、たとえば、園児台帳を複数の場所から閲覧することで保護者とのスムーズな連携が可能となり、未曾有の事態を乗り切れたといった声が寄せられた。
私自身、コロナ禍以前からデモや研修を行うと、現場の保育士さんから「すごい!」と声が上がる様を目の当たりにして、「HOICT」の存在意義を再認識したものです。
現場の効率化が求められていたなかでの、誰もが経験したことのない緊急事態。こうして、「HOICT」の重要性とニーズはますます高まっていく。
コロナ禍におけるイレギュラー対応に奔走しながらも、プロジェクトではいよいよ「HOICT」最大の課題である、帳票機能の改善に手を付けることにした。「立ち上げ時から課題として上がってきた帳票の問題に、終止符を打つ」と、M.F.は意気込む。
「HOICT」に限らず、一般的にシステム標準搭載の帳票は、実業務に合わなかったり使いづらかったりするので、結局カスタマイズが発生してしまうわけです。でも、利用者からしたら、そこでカスタマイズなんて費用もかかるし納得しづらい。
やはり私たちとしてはカスタマイズではなく標準機能として、保育園の方々が画面上で直感的にレイアウトを組めるような自由な帳票機能を作りたいと考えました。
こうしてプロジェクトチームが導き出した最適解は、多数のテンプレートを用意したうえで、それらをさらにユーザー自身が調整できるという機能だ。標準だけでは業務をカバーできない、かといってゼロベースで起こすのは難しい、そこにうまく折り合いをつける仕様となっている。こうして、E.I.が要件をまとめ、「フリー帳票」機能をかたちにしていった。
営業担当にも会議に参加してもらって、多くの現場ニーズをヒアリングしながら、どんなテンプレートを用意するか、どういう部品であれば使いやすいか、などを一つひとつ決めていきました。そして、プロトタイプで実装したものを、操作性を含めてテストしてはフィードバックする、という工程を繰り返していきました。
2022年9月、ついに「フリー帳票」機能リリース。プロジェクトチームは固唾を呑んで、ユーザーの反応をうかがった。
思い入れがある機能だった分ドキドキしていましたが、結果、営業担当からも「『標準機能で対応可能です』と胸を張って言えるのは強い」という声をもらったり、デモでも非常に反応が良かったりと大好評。既存ユーザーについても、かなり利用してもらえているのがデータに表れていて、かつ、操作に関する問い合わせも少ないため、支持いただいていることがわかります。
こうして、目玉機能「フリー帳票」を備えた「HOICT」。プロジェクトでは、これからの展望をどう考えているのだろうか。
「HOICT」の次なる課題は、導入後、ユーザーによって園での利用頻度にギャップがある状況を改善すること。要するに、利用する人としない人に分かれてしまっているわけです。「使うことでこんなに便利になる、効率化する」ということを啓蒙していき、利用してもらえるように働きかけなくてはなりません。
そのためにも、社内だけで考えるのではなく、積極的にユーザーの声を聞いて機能を開発していくことが大切だと思っています。
また、個人的には、保育業界だけではなく他の自治体業務や技術的知識をつけていく必要性も感じています。というのも、国によって「自治体情報システムの標準化・共通化」が進められている昨今、データ連携が求められているので、最適なソリューションを提案するうえでは、そうした俯瞰的な視点が必要になっているからです。
公立保育園向けシステムでは、競合ベンダーが圧倒的シェア1位ですが、対抗できないとは思っていません。「フリー帳票」もそうですし、E.I.が言うように両備システムズの強みである公共系他システムとのシナジーを付加価値として打ち出していけば、大きな可能性があります。
開発から導入、保守・サポートはもちろん、データセンターまで自社で完結できる総合サービスを提供できるよう、より一層社内を巻き込んでいきたいですね。そのためにも自分自身、開発はもとより、マネジメントに至るまで、スキルを拡げ、総合力を養っていきたいです。
奇しくも、2017年に待機児童数が849名とワースト2位だった地元岡山市の待機児童は、2023年度には個別事情で入園できなかった1名へと改善。「HOICT」は、こうした行政の想いとともに、これからも「保育園」の課題を「ICT」で解決していくに違いない。
両備システムズの良さは、一言で言えば、「人の良さ」。私自身、志望した理由もそうですし、入社以来ギャップを感じたこともありません。決して甘やかされるというわけではなく、お互いに相手のことを慮って接することさえできれば、自然体で仕事に取り組めるということです。
それは社員一人ひとりを大人として扱っているということでもあります。実際、社歴が浅いうちから大きな仕事を任されますし、若手の意見・提案でも無下にはされず、「いいね!」と応援してくれる環境なのです。
このように出る杭が打たれない両備システムズ。是非あなたの「やりたいこと」や「こうしていきたい」をじゃんじゃん持ち込んできてください。
両備システムズの主力のひとつは、公共系のシステム。つまり、自治体の業務を支援することが多いので、端から見たら業務のイメージがつきにくいかもしれません。その点、「HOICT」は、納品先である自治体だけでなく、市民である保護者も利用します。つまり、自分自身がユーザーになる可能性もあるシステムなので、「自分自身が使いたい」という気持ちと向き合うことができ、やりがいを感じやすい環境です。
こうした「ジブンゴト」に近いところから「人とシステムとの関わり」を膨らませていくことで、公共系の醍醐味である、地域社会への貢献、地方活性化につなげていくのも一つの手。最終的には、開発と利用者双方にとって「より良いソリューション」を、広い視点で捉えてくれる方と一緒に働けたら嬉しいです。