バングラデシュにおける 農業DX実証事業の成果を現地政府等へ報告

生産性20%・メタン排出30%以上削減で持続可能な農業を推進

株式会社両備システムズ(本社:岡山県岡山市、代表取締役社長:松田 敏之、以下 当社)と株式会社アジクル(本社:神奈川県横浜市、代表取締役:渡辺太一、以下 アジクル)と、ANTAR Society for Development (本社:Dhaka、代表:Mr. Md. Emranul Huq Chowdhury、以下 ANTAR)は、バングラデシュ人民共和国(以下 バングラデシュ)において、効率的な農業の推進と生産性向上に貢献するため、農業DXおよびカーボンクレジット創出に向けた実証事業を2025年2月から12月にかけて実施しました。そして、事業を通じて得られた成果を、バングラデシュ農業省副次官など現地政府および日本政府関係者に対し、2025年12月2日に報告しました。
農業データプラットフォームの運用を開始しており、AWD農法(※1)の普及により目標としていた生産性向上は20%以上、メタン排出量については目標30%の削減に対して平均30%以上の削減が見られ、農家の財政的支援に繋がることが確認され、政府機関や農家からの需要が高まっています。

(※1)AWD農法:水田での稲の成育途中に田に水を満たした状態と、水を落として干した状態とを、数日おきに繰り返す水管理技術です。この手法により、土壌からのメタン発生量を低減させるとされ、バングラデシュ稲研究所の調査によると約35%のGHG削減効果(※2)が得られます。更に、同農法は節水及び稲作の収穫量増加にも寄与します。

(※2)出典:バングラデシュ稲研究所(Bangladesh Rice Research Institute(略称:BRRI))​​​​​https://brri.portal.gov.bd/sites/default/files/files/brri.portal.gov.bd/page/e6c87aa6_d854_45c0_84c8_85858f25cc70/2022-03-03-05-48-b8bbef7e7811fc18e83dab8e2976f063.pdf

背景

現在、両備グループでは、東南アジアを中心に、倉庫管理や陸送事業の運営など海外事業展開を進めています。一方、当社は、2019年より海外事業として、ラオス人民民主共和国において事業を展開し、ノウハウを蓄積してまいりました。今後、更なる拡大のためアジアへの進出を検討している中、ITの急成長を遂げているバングラデシュに着目し、脱炭素ソリューションの拡大を見据え、新たな分野での取り組みを行うことに決定しました。
バングラデシュは、主要産業として農業があり、世界で3位の稲作生産量となっていますが、農業課題としては、農業技術の遅れや農家の財政的困難な状況があり、効率化・生産性向上、農家の収入向上を目指しています。そのためには、営農指導員による技術支援や農機具支援だけでなく、農業従事者に収益を還元する仕組みなど、様々な課題解決が必要とされています。
まず、小規模な調査事業として2024年3月より開始、2025年2月に経済産業省のグローバルサウス未来志向型共創等事業(※3)に採択されており、エリアを拡大しています。

(※3)令和5年度補正「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」:https://gs-hojo-web.jp

実証事業について

1. 目的

①データに基づいた営農指導及びデジタル化推進による効率的な農業の実現​
②AWD農法を用いた気候変動対策の実施
③カーボンクレジットの創出及び市場の活性化

 

2.期間

2025年2月~12月

 

3. 内容と結果(2025年2月~10月までの実績)

・農業プロセスデータ収集及びメタンガス収集​・分析
 営農指導及びフォローアップ、定期的なモニタリングの実施。
 農業データプラットフォームを活用したデータ入力を実践中。

 

・農業データプラットフォームの構築及びAWD農法の実施。
 営農指導員と操作性を確認し10月より現場導入を開始。
 3収穫期合計面積値5,697ha(目標:3,900ha)。

 

・カーボンクレジット創出に必要なデータの整理​
 AWD農法において約20%の生産性向上
 メタン排出量については最大約40%の削減(※4)

(※4)土壌や排水問題による地域差によって削減量のばらつきがあるため平均とする

本件に対する今後の期待

〇Dr. S M Mofijul Islam, Senior Scientific Officer, BRRI

「本件がバングラデシュ農業のカーボンフットプリント削減と農家の社会経済的向上に大きく貢献すると信じています。AWD農法を適切に導入すれば、水の使用量が減り、収量が増え、生産コストが下がり、メタン排出も大幅に削減できます。計画どおりに拡大できれば、気候変動の影響緩和にさらに大きく寄与できるでしょう。AWD農法はシンプルでモニタリングしやすく、水の節約によって農家に直接的な利益をもたらします。
しかし課題として、ポンプ所有者が協力せず、水の使用量が減っても農家が同じ料金を支払わなければならない状況があります。そのため、農家・ポンプ所有者・政府が協力し、水使用量の削減が農家の灌漑コストの削減につながるような政策をとる必要があります。」

今後の展望について

実施エリアを拡大し、農業データプラットフォームの浸透と現地へのAWD農法の普及を進めることで、マイクロファイナンスによる資金調達が可能となる仕組みづくりや、政府機関と連携しカーボンクレジット創出に向けた取り組みや、農家の課題解決を継続して進めてまいります。

このページに関するお問い合わせ

株式会社両備システムズ ビジネス戦略本部
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