Vol.05かぐや秘話

「はじめまして。OGのかぐやです」
竹をあしらったお洒落なカフェに現れたのは、仕事できるオーラで光り輝く、まさに姫と呼ぶにふさわしい存在でした。「フラペチーノをいただくわ。ほら、頭脳労働だから、糖分を補給しないと。ね?」
そのゴージャスな笑顔に、学生はすっかり萎縮してしまいました。
「で、何が聞きたいのかしら」
「はい。あのう、なんでも聞いていいんでしょうか」
「なんでも聞いていいのよ」
「それじゃええと、営業職にはノルマってあるのかな?なんて……」
かぐやOGは、小さくため息をつきました。あれ、質問しくじったか? あわてる学生。かぐやOGは、遠くを見るような目をして言いました。
「質問に答える前に、昔話をしてもいいかしら。あれはそう、まだ私が、ほんの小娘だったころ」

いいともダメとも言ってないのに、かぐやOGは語り出しました。「5つの企業が、私に内定を出したの。そう、同時によ。やだ、そんなに驚くようなことかしら? わからないわ。とにかく私は、5社にそれぞれお題を出した。私が望む労働条件を持ってきてくれた企業に就社する、と。どれも、命さえも危険にさらさなければ手に入らないレアな特別待遇ばかりだった」
「そのレア待遇とは一体……」
「本題じゃないから省略させて。ただ、あなたの言い方をなぞるならば、私は企業たちに『ノルマ』を課したことになるわね」
「いえ、そうは思いません」学生は何度も首を横に振りました。「企業たちは、あなたの能力を勝ち取るために喜んでその条件を受け入れ、自らの意思で行動したはずです。それをノルマとは呼びません」
かぐやOGは優しく微笑みました。
「あなたならきっと、わかってくれる。会った瞬間にそう思った。だから、この話をしたの」
学生は目を潤ませました。
自分にとって、大切な夢を叶えるために動く。その時、ノルマはノルマではなくなる。会社もそうなんですね」

かぐやOGは、いつのまにかとっぷりと暮れた空を見上げました。
「ごめんなさい。そろそろ休憩時間が終わる。1分で迎えが来るわ」

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