2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、世界のマーケットは大混乱に陥り、完全にリスクオフムードへと転換されました。安全資産とされる、「日本円」、「スイスフラン」が買われると同時に、有事のドル買いが主要な動きとなりました。一方で、ロシア、ウクライナに地理的に近い「ユーロ」は売り圧力の強い展開となりました。3月7日、EUR/CHFは0.9970を記録し、スイスフランショック以来の水準までEUR売りが優勢となりました。

 

 欧州、米国をはじめとする各国による、ロシアに対する経済制裁の開始によって、ロシアとの関係は不安定なものとなり、エネルギー・食料価格の上昇といった問題が浮上してきました。特に、欧州は石油、天然ガスの約60%をロシアからの輸入に頼っていたため、欧州圏全体のエネルギー問題が浮彫になりました。エネルギー価格上昇の波は徐々に大きくなり、3月1日にはWTI原油先物価格が一時106ドルまで上昇し、その後も上昇し続けました。さらに、3月8日にはLMEニッケル価格が10万ドルを突破し、過去最高値を付けました。エネルギー・食料価格の上昇といった問題は、世界中のインフレ加速へ拍車をかけました。


 インフレ圧力とともにロシアによるウクライナ侵攻リスクの中で、地政学的な面からもEURは全通貨に対して下落局面にあった2週間でした。そして、3月10日21時45分(日本時間)よりECB(欧州中央銀行)による声明が発表され、22時30分より、ECBラガルド総裁の「インフレは短期的に非常に加速する可能性がある」、「成長見通しへのリスクが著しく増大した」との発言により、
物価上昇と景気停滞が同時進行するスタグフレーションのへの懸念が高まり、EUR売りの動きが優勢となりました。

 さらに、2月の米国消費者物価指数は、前月比+0.8%、前年比+7.9%と、1982年1月の前年比+8.3%以来の高水準を記録しました。また、燃料や食料を除いたコア指数は、前月比+0.5%と伸びは1月+0.6%から鈍化したものの、前年比では+6.4%と1982年以来最大の伸びを記録しました。
 

 

今後のマーケットの展望

 ロシア、ウクライナに関する地政学リスクについて、市場参加者の中では徐々に情報を織り込んできていると考えられます。このままリスクオフのテーマが継続するとは考えづらく、より大きなポジティブサプライズあるいはネガティブサプライズがない限り、マーケットの動きは限定的であると推測します。そして、今回のECBラガルド総裁の発言に加え、2月の米国消費者物価指数の発表を受け、3月16日、17日に開催されるFOMCに向けて、USD主軸の流れへ切り替わっていくと想定しています。
 一方で、戦争によってもたらされた、原油、天然ガス、小麦をはじめとするコモディティ価格の上昇は、結果的に、インフレ加速に繋がりました。物価上昇下における景気停滞といったスタグフレーションが起こりうることも視野に入れておく必要があります。

 

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