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INTERVIEW #01チャレンジのトビラを 開いた社員
金融の最前線から
FinTechへのトビラを開く―
私が金融の世界に興味を持ったのは、幼少期の環境が大きく影響しています。祖父も父も銀行員で、日常的にモルガン財閥の話や経済のリアルな動きを耳にする機会が多かったことから、自然と金融への関心が芽生えました。ただ、私が大学を卒業したのは2001年の就職氷河期。当時の厳しい雇用環境を考え、すぐに就職するのではなく、奨学金を活用して大学院へ進学。統計学を専門に、途上国の経済開発を研究し、世界銀行やIMF、国連、アジア開発銀行などで活躍する先生方から直接学ぶ機会を得ました。学術誌への論文掲載や学会での発表経験は、今のキャリアにもつながる貴重な財産です。
2003年に大学院修了後に住友信託銀行へ入社。大阪本店に配属され、大阪淀川3区から兵庫県姫路市までのエリアの法人営業として新規開拓に奔走しました。当時はまだGoogle Mapsもなく、紙の地図にピンを刺して営業車に乗り込む、そんな時代です。信託銀行ならではの幅広い業務に携わる中で、「どうすればお客様にとってWin-Winの提案ができるか?」を常に考え、実践するスキルが鍛えられました。
しかし一方で、大学院で学んだ経済や統計の知識を活かせていないことにギャップを感じていたんです。そんな中、兵庫県という土地柄、貿易会社の多い環境に触れるうちに「為替」の持つインパクトに強く惹かれていきました。そこでマーケット部門の社内公募に立候補し、入社3年目で為替ディーラーとしてのキャリアをスタートさせました。
当時は、ゴールドマンサックスやドイツ銀行といった外資系金融機関が日本市場に本格参入し、まさに群雄割拠の時代。自分もこのまま為替ディーラーとして専門性を極めていきたいと考え、2006年にBNPパリバへ転職。外資系金融機関の厳しい環境の中でも、グローバルな先端技術を学びたい一心で挑戦を決意しました。しかし、転職直後にリーマンショックが発生。金融市場の混乱で自分の立場も不安定でしたが、住友信託銀行時代に培った「お客様の課題を現実的に考え、最適な提案をする」スキルを活かし、為替・金利だけでなく株のブロックトレードのクロスセルなど、多角的な提案を行い生き残ることができました。
2011年にはソシエテ・ジェネラルへ移籍。金融機関・事業会社向けのビジネスを考える立場となり、外国為替市場のダイナミズムを肌で感じながら、充実した10年間を過ごしました。
為替ディーラーとしてキャリアを積む中で、金融業界におけるテクノロジーの進化にも関心を持つようになりました。特に印象的だったのは、ゴールドマンサックスのトレーディング業務の変革。2000年には600人以上いたトレーダーが、2017年には2人にまで減少し、代わりに200人のエンジニアが自動取引プログラムを運用しているというニュースは衝撃的であり、同時に危機感を覚えました。「日本の金融業界はこの潮流に乗れていない。だからといって海外のやり方をそのまま真似すればいいという単純なものではない」と。日本の金融機関がエンジニアを雇っても、うまく機能しないのではないかと考えたのです。
そんなモヤモヤを抱えていた頃、住友信託銀行時代の同期である松田敏之(現・両備ホールディングス代表取締役社長 兼 両備システムズ代表取締役社長)と再会。かねてから構想していた「AIを活用したヘッジファンド」のアイデアを伝えたところ、「じゃあFinTech、一緒にやってみようか」と話が進みました。信頼できるパートナーと出会えたことは大きな転機となりました。
私たちが重視したのは、金融パーソンにITを学ばせるのではなく、エンジニアに金融やマーケットの知見を共有しながら、ともに成長していくアプローチ。データの扱いやモデリングに長けたエンジニアの強みを活かしつつ、金融の知見を組み合わせることで、新しい価値を生み出すことを目指しました。
実際に両備システムズに入社し、エンジニアと共にプロジェクトを進める中で、その吸収力と柔軟性に驚かされました。為替という専門性の高い分野でも、スポンジのように知識を吸収し、狙いを定めれば有機的に動く。そのスピード感と適応力は、これまでの金融業界の常識を覆すものでした。
AIアルゴリズムを駆使し、実際に自社でファンドを立ち上げ、マーケットで結果を出しながら改良を重ね、お客様に提供していく。そんな私たちのビジネスモデルは、野心的でありながらも極めて実践的。だからこそ、みんなのワクワクの源泉になっていますし、既存の金融機関や他のIT企業では実現が難しい、両備システムズグループだからこそ可能な取り組みだと確信しています。
今、私たちが取り組んでいるのは、単なる技術革新ではなく、金融の未来を形作ること。激動するマーケットに適応しながら、新しい価値を創造していく挑戦は、これからも続いていきます。
私自身が就職活動をしていた頃を思い出すと、「大企業のほうが安定しているし、幅広い経験が積めそう」というイメージを抱いていました。そのイメージに囚われ過ぎるのも良くない、ということをここではお伝えしたいです。
というのも、大きな組織の中で仕事をするというのは、ある意味「配属ガチャ」に左右されるということでもあるからです。個々人の「キャリアデザイン」の重要性が謳われるようになっていますが、大企業ではそんな道筋を立てるのは逆に難しい場合もあります。
実際、大企業に就職した同級生たちに比べて、私が新卒入社した住友信託銀行は大手とはいえ他の大手金融機関と比べるとコンパクトで、一定の応募資格を獲得さえすれば自らキャリアを選ぶことができ、結果的に専門性を磨くことができたわけです。
また、巨体であればあるほどスピードも方向転換も容易ではありません。このVUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)と言われる激動の時代に、投資の決断の遅れは致命傷となり得ます。その点、両備グループ/両備システムズグループは、経営陣による迅速な決断と、コンパクトで身軽な組織の集合体という体制が強み。私がカンパニー長を務める Financial AlgoTech Company の立ち上げの経緯、そして存在こそがその証左に他なりませんよね。
逆に言うと、Financial AlgoTech Company は、両備システムズグループの特異性の一片に過ぎません。ともに学びながら、IT を活用したわくわくすることを、どんどん企てていきましょう。